最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)658号 判決 1948年10月26日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人齋藤竹松の上告趣意及被告人山田繁の上告趣意は末尾添付各別紙記載の通りであってこれに對する當裁判所の判斷は次ぎの如くである。
辯護人齋藤竹松の上告趣意第一點第二點及被告人本人の上告趣意に付て。
刑法の一部を改正する法律(昭和二二年法律第一二四號)の附則第四項は同法施行前の行為については刑法第五五條の適用に付てはその廢止に拘わらず從前の例に從う旨を定めて居る。其故同法施行前の行為である本件に付て原審が刑法第五五條を適用所斷したのは違法でない。また原判決は結局刑法第五五條を適用して居るのであるから右法律の附則第四項を適用したのであることはおのずから明である。其適用は特にこれを明記しなくても差支ないので論旨は理由がない。
第三點に付て。
刑事訴訟法第二四二條は本案の裁判に付て上訴あったときに限り訴訟費用の裁判に對し不服を申立てることが出来る旨を規定し訴訟費用の裁判に對し獨立して上訴の申立をすることが出来ないこととして居る。從って本件の如く本案の裁判に對する上告が総て理由のない場合においては訴訟費用の裁判に對する上告は許されないものと解すべきである。其故論旨は採用出来ない。
よって刑事訴訟法第四四六條に從ひ主文の如く判決する。
以上は當小法廷裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)